新築分譲住宅・マンションなどの広告には、通常の販売広告(本広告)以外に販売価格の決定前に予告広告として広告を出すことができます。予告広告は新築分譲の不動産販売チラシでは一般的に行われています。
高額な不動産の購入を即決できる人は少数に限られますし、多くの消費者は様々な物件を慎重に検討するため、価格決定前に物件の情報を得ることができる予告広告は消費者に置いてもメリットがあると言えます。
ただ、予告広告の実施には公取(公社 首都圏不動産公正取引協議会)によって決められた要件があります。
予告広告の定義
予告広告については、公取においては下記のように定義されています。
予告広告」とは、分譲宅地、新築分譲住宅、新築分譲マンション、新築賃貸マンション又は新築賃貸アパートであって、価格や賃料が確定していないため、直ちに取引することができない物件について、その本広告に先立ち、その取引開始時期をあらかじめ告知する広告表示をいいます。
不動産広告の相談事例(表示規約)2 予告広告の意義
つまり、この段階では物件販売はもちろん、申込みの受付や順位の確保などもしてはいけないとされています。
予告広告と本広告の違い
予告広告は本来不動産広告で必要な情報を、定められた要件を満たすことで省略することができます。予告広告で省略できる情報はその告知媒体や物件の種別によって異なります。
公取では不動産広告で必要な情報を表示規約第8条及び規則第4条に定める別表を公開しています。不動産広告を作成する際は念頭に入れておきましょう。下記を参考にしてください。
- 分譲宅地(小規模団地を含み、残区画数が1区画のものを除く。)
- 現況有姿分譲地
- 売地・貸地
- 新築分譲住宅(小規模団地を含み、残戸数が1戸のものを除く。)
- 新築住宅・中古住宅・新築分譲住宅で残戸数が1戸のもの
- 新築分譲マンション(小規模団地を含み、残戸数が1戸のものを除く。)
- 中古マンション・新築分譲マンションで残住戸が1戸のもの
※チラシを出す機会の少ない賃貸マンション・アパートやリゾート会員券については省略しました。
主に価格、販売区画・戸数、管理費等の金額などが該当します。
予告広告に必要な要件
予告広告を実施するためには記載が必要な要件があります。以下にあげます。
- 14ポイント以上の大きさの文字で「予告広告」
- 及び販売予定時期又は取引開始予定時期
- 本広告を行うまでは、契約又は予約の申込みに一切応じない旨及び申込みの順位の確保に関する措置を講じないという旨
まず、上記3点は目立つ位置に近接して表示するように規定されており、チラシの場合は下記の例のように表面に表示されていることが多いです。
不動産広告ではチラシの裏面などで物件の必要な情報を物件概要として、まとめて記載するのが一般的ですが、予告広告の場合は販売戸数(区画)や価格が確定していないため表記が本広告と異なります。
※価格や販売戸数が確定している場合は予告広告ではなく、本広告として告知することになっています。
価格が未定の場合は「販売価格→未定」、予定されている価格が出ている決まっている場合は「予定最低価格」「予定最高価格」「予定最多価格帯」をそれぞれ記載します。販売戸数については、予告広告をする時点においてすべての予定販売戸数(区画)を一括または数期に分けて販売するかが確定していない場合、本広告において明示することを記載しなくてはいけません。
その他の注意点
予告広告は該当する販売住戸(区画)について、 本広告やその後の販売時期など制限がありますので注意が必要です。
予告広告を実施した媒体・地域には必ず本広告を実施する
予告広告はあくまで本広告で正式な告知を行うことが前提で認められた広告であり、予告のみで広告を出すことは出来ません。また、本広告は予告広告で実施した媒体および地域をカバーするように実施しないといけません。
ただし、 予告広告を特殊な媒体(例:発行間隔のある月刊誌・季刊誌等)で行い、本広告を同一媒体で実施することが困難な場合においては、新聞、雑誌、インターネット(自社のホームページも可)に限り本広告を実施してもよいことになっています。その場合は予め予告広告に、本広告を掲載する予定の媒体名(WEBサイトの場合はアドレスも)と掲載予定日を表示しておく必要があります。
例:本広告は令和OO年OO月OO日付け〇〇新聞朝刊にて掲載いたします。
本広告前に販売ができない
一度予告として告知した区画は、告知した販売開始時期より前に販売はもちろん、申込みや順位の確保も出来ません。
販売条件に変更が生じた場合は訂正広告をする必要がある
予定であっても販売戸数や予定販売価格に変更が生じる場合は不当広告となります。やむを得ず変更しなければならない場合、訂正広告が必要です。そうならないためにも、予定販売価格や販売戸数の告知には慎重に行ったほうが良いと思います。
最後に
販売側の立場においては、予告広告を行うことで物件に対して消費者の反応を確かめながら販売価格や販売戸数を調整することができます。
ただし公取の見解では価格もしくは販売戸数等以外の事項(交通の利便、規模、形質、環境等)を先に告知し、消費者に物件選択の時間的余裕を与えることを趣旨として予告広告を規定していますので、販売戸数や価格が確定しているにも関わらず予告広告を実施することは、望ましい形ではありません。
公取が規定するルールは消費者が不利益を被ることのないように定められたものです。消費者を惑わすような広告は避けるべきでしょう。
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